ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第22章 美景
とりあえず腕に下げていた買い物袋を端の方に置いてからおずおずと様子を伺っていると
グラスを手にお酒が収納されているチェストへ寄ったクロロさんはクリクリと大きな瞳で私を振り返った
「………沙夜子お前……酒無くなってんじゃん……」
相当驚いたのか少しばかり張り上げられた声に彼も此方に視線を向ける
「えっ?!………だって飲んでいいって言ってくれたし………」
いきなりの注目と指摘に視線を游がせた途端にクロロさんは吹き出してしまった
「言ったけど、この段全部無くなってんじゃん!」
「あは、あははははは……ちょっと荒れてたのかな?」
流石に飲み過ぎだっただろうか……なんて思いながらも大袈裟に笑ってみる
正直には笑って誤魔化すしか術がない
いくら恋に破れていたとは言え流石にびびられるくらいには飲んだ自覚があるのだ
この事実を彼に知られる事はかなり今更な気もするが非常に恥ずかしいものだった
「あははははははは!いやぁ羽目外しちゃいましたよぉ~!」
関西人の悪い所…………馬鹿みたいに調子に乗った感じでオーバーなリアクションを取り、未だ恥の上塗りをする私
彼はそんな痛々しい姿を只無表情で見ていて
こんな場面では呆れるとか鼻で笑うとか何らかのリアクションが無ければ心が折れそうになるのだと痛感した
「ははは………いや別に全然いいんだけどさー」
散々笑った後に「引くわー」と軽い口調で聞こえたけれど私はとにかくずっと笑って誤魔化した
乙女心を抉る言葉も乙女にあるまじき暴飲っぷりを暴かれた後では気付いていないフリが精一杯だった
ここにやって来てまだ数分も経っていないのにどっと疲れる………………