ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第22章 美景
彼に乱暴に傘をひったくられたクロロさんは無抵抗と言わんばかりに無言を貫いていて
エレベーター内には気まずい沈黙が広がる
「…………イルミさん」
呼び掛ければ彼は方眉を釣り上げる仕草だけでその先を促した
「…………呆れましたか……?」
私の声は無様に震えていた
軽率な自身の行動を深く後悔していた
俯く私の頭上に降ってきた溜息交じりの声
「まぁね。」
「……………っ………」
当たり前の一言がグサリと胸に突き刺さる
私は彼に再三言い聞かせられていた
ここが私の世界である事から外出には制限を掛けない、ただし報告、連絡を怠らず出来る限り事前に伝えておく事
そして普段とは違う何らかの物事の場合はその場で電話相談する事……
彼は平和な世界故に条件を緩和し、私に自由を与えたのだ
自由と言っても酷く束縛的だし一般的には不審で、遵守しようと努めている私は最早正常ではないかもしれないが………
彼の猟奇性を考慮するなら本当に優しい条件だった
多分私がなるべく友人との外出を控えている事も理解してくれていて、私の家族との時間も大切に思ってくれているからだと感じている
それだけ譲歩してくれているのに私はその信頼を裏切ってしまった
「……………嫌いになりましたか……?」
蚊の鳴く様な声だった
ここで「嫌いだ」と言われてしまえば私はどうしたら良いのだろう
目の前が真っ暗で足元に感覚が無い
自身の呼吸音だけが嫌に大きく聞こえて吐き気すら覚える中で彼は
「何でそんな思考に行き着くのか意味がわからないけど、嫌いな奴にわざわざ説教する訳ないだろ。」
普段と変わらない単調な台詞を紡いだ