• テキストサイズ

ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第22章 美景







「あ………そう言えば俺、沖縄でシーサー盗ったんだった」


「はい?!?!どえらい物盗んでるじゃないですか!!何やってるんですか!!私知らなかったですよ!!!」


「すっかり忘れてたからな」


「いや、犯罪やし……しかも神様ですよ!!!」


「盗族だからな!」



狭い傘の中に和気藹々とした空気が漂う

たいして親しい訳では無いけれど以前と変わらぬその笑顔が一瞬にして団長の顔を覗かせた

私はピリピリと身体を震わせる底知れぬ恐怖感に咄嗟に自身の肩を抱く

本当に一瞬の出来事だった筈なのに自身は無力な弱者なのだと確信させる形の見えない脅威は殺意と呼ばれる物だろう


一本の傘から見える雨景色の中に酷く冷たい瞳で此方を睨み付ける彼の姿があったのだ

夜の闇に溶ける様に佇んでいたその身体をゆらりと此方に向ければ一層冷え込んだ世界

ざわざわと騒ぐ木々は風に揺れているのか彼等に圧倒されているのか

私が瞬きを忘れている内にぶつかった殺気と殺気は何の前触れも無く打ち消えて

再びアスファルトを打つ雨音が耳に煩く響いた時

彼は大層気だるそうに濡れた前髪をかき上げた


縮み上がる私の背にそっと手を添えて前進を促すクロロさんを恐る恐る見上げれば


真っ直ぐに彼を見据えたまま笑顔を浮かべていた


「たまたま沙夜子と会ったんだ」


軽い口振りに彼の弓なりな眉が不機嫌に歪む


「……白々しい。」



私がこの時密やかに冷や汗をかいていたのは言うまでもない…………





/ 341ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp