ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第22章 美景
………なんてぼんやり考えていたのも束の間
自然に傘を奪われ雨を凌ぐ道具を失った私は何となくクロロさんに誘われるまま歩いていたけれど
それはアパートへの帰路だからというのが前提としてあったからだった
しかしクロロさんは本来曲がる筈の角を無視して住宅街を真っ直ぐに進もうとしている
勝手ながら漠然と私達のアパートへやって来るのだと当たり前の様に思っていた私はここにきて漸く少し焦っていた
「………えっ……あの、アパートこっちなんですけど……?」
ちょっぴり懐かしい異世界に土地勘があやふやになっているのかもしれないとやんわり確認を入れた私だが、視界に飛び込んで来たのはとびきりの笑顔だった
「まぁ……あれだ、積もる話もあるだろう?折角だしうちに来いよ。」
「えぇ!?……えっとイルミさんに連絡しますね!」
「…………その動揺は怪しいな」
「えっ!!何がですか!」
「最後に彼処に立ち入ったのは沙夜子だ………何か隠してるのか?」
「はい?!?!違いますよ私は「管理を任せていた筈だが?」
「管理は完璧ですよ!!!じゃなくてイルミさんに確認を………!」
「ははは、冗談だよ」
「………っ」
「イルミなら連絡済みだ、ほら行くぞ」
何故か楽し気に笑うクロロさんは話している内にもマンションへの道のりを進んでいて
私は何だか懐かしさにほだされて隣を歩いた
私はクロロさんにとって何の利益も生まない凡庸な存在だという謎の自負
それはクロロさんが私や彼に危害を及ぼすつもりならもっと効果的な方法がいくらでもあっただろうという漠然とした思考と
これまで僅かながら重ねた時間から来る信頼
そして懐かしい人に出会えた純粋な高揚感からだろうか