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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第21章 秋雨の時に






10月のある日




私は激しいホームシックに見舞われた

きっかけは両親が帰国したという報告の電話

電波ひとつで家族の状況を簡単に把握出来る便利な世界に染々感激しながらも私は無性にアパートが恋しくなったのだ


魅力的な車旅…………しかし今この世界でしか出来ない事を考えた時、私はあのアパートで彼と過ごしたいと思った

拠点を転々と変えて様々な景色を眺めた異世界生活の中で幾度と思い出していた安住の地

毎日がデートなんて凄く贅沢だけど、私はもっとありふれた幸せを求めていたのだと車の旅に出たからこそ気付けたのだ

………我ながら非常に我が儘だ

私が日本を旅したいと言い出したくせに今度は帰りたいだなんて……

だけど、それでも故郷恋しさには勝てず



「すみません、帰りたいです……」


唐突に告げた私は彼の気持ちを見逃すまいと必死だった
心の中に溢れる気持ちを言葉に変えて、私なりに恐る恐る紡げば

彼は何を考えているのか掴み所の無い瞳で私を見詰めていた


「じゃ、帰ろう。」



不機嫌な風でも残念な風でもなく飄々とした態度のままの彼は実に軽くそう言った


「えっ……怒らないんですか……?」


「どうして?」


首を傾げた彼は不思議そうに私を見ていて


「………えっと………いきなりやし……我が儘でしょ……?」


てっきり咎められるだろうと思っていたのに予想外の反応にまごつく私に降ってきた溜め息



「我が儘とは少し違うね。沙夜子は馬鹿な上に突拍子が無いんだよ。………まぁ、そんなのはいつもの事だし別に、ね。」


私の考え等お見通しとばかりに鼻で笑った彼は「あと情緒不安定。」なんて小馬鹿にしながらもすんなりとアパート迄の道のりを進んでくれた



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