第20章 食事の合間のお喋りは

リンゴジュースを飲み込んでチラリと彼を見詰めた私

チェーン店ならまた巡り合うチャンスがあるじゃないかとポジティブに考えての事だった



「一応全部で7店舗あるけど、関東方面を中心に出店されているみたいだよ。」


「…………イルミさんって凄いですね……そんな事も調べてたんですか」


私は何故か冷静になっていた

チェーン店かどうか、なんて彼に質問する前にGo○gle先生に聞くべきだし

普通なら縁も無い土地のパン屋さんの事を聞かれても答えられないだろう

彼が如何に優秀で余念が無いのかを垣間見た気分だ………彼が全知全能たる由縁……




「○村にしかないパン作りを目指しているらしい。20種程の国内外の粉をそれぞれのパンの個性に応じて使い分け、低温で長時間発酵させることによってその旨味を最大限に引き出しているらしい。」


「……東和○………？」


「誰それ。」


「焼きたてジャパン…………」


「他にもサイトに色々書いてあったよ。………聞く？」


「………いえ………」


脳内に懐かしいキャラクターを思い浮かべながらも緩く首を振った私とコテンと小首を傾げた彼の間には謎の沈黙が広がり


その後に彼はコーヒーを喉に流した



「ま、ネットの情報は信用して成らずだけどね。」


「…………今は特にそうかもしれないですね」



パン屋さんの話から急に色を変えた話題だが、川のせせらぎの合間にお喋りをするのはささやかで幸せな一時だった