ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第19章 彼と私のヒトコマ
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無機質な箱がズラリと並んだ店内には訳のわからない軽快なBGMが流れていた
彼女は病院へ行くのをやんわりと拒んだ
水分摂取量や食欲、顔色を見る限り重体では無いだろうと判断し、その言葉に従う事にした
毎日変わる環境と慣れない車中での暮らしに無意識下で疲労が蓄積していた可能性もある
自身はそんな些細な事で左右される事は無いが彼女の軟弱さを考慮するとあり得ない話でも無い
体調が安定するまで言い付けを遵守し、安静にしていると言うなら無理に医療機関へ連れて行く事も無いだろう
無数のパッケージの中から何が彼女に適しているのかを吟味する
症状は発熱のみ
咳や嘔吐、鼻水等の反応は見られていない
風邪の引きはじめに、と謳っていたり総合なんて物もある
風邪という体調不良に対してよくもここまで細分化したものだ
喉や鼻に特化した物は自然と除外され残った物の中から数個を手に取った
………………粉…………錠剤………………
自身が此所へ来てどれくらいの時間が経過しているのだろう
箱の前に立ち止まってから随分と手間取っているのは確かだ
母親に手を引かれた園児が頻りに自身を指差している
粉状の方が迅速な吸収が出来、より早期の効果を期待出来るかもしれないがわざわざ錠剤があると言うことは何か他に利点があるのだろうか
………………………滑稽で馬鹿馬鹿しい奴だ
どうしてお前がたったひとりの女の為に無駄な時間を過ごしているんだ
時々聞こえる囁き
………………錠剤………………錠剤だ
確か彼女は粉が苦手だと話していた
お薬のめたね、なる幼児用のゼリーを欲していた事を思い出す
発熱用の風邪薬をひとつ手に取って、でこに張り付けるシートも買っておいた
刺さる視線を感じるが心底どうでも良くて袋に入れられた商品を拐う様に店を後にした
住処と言うと複雑だが、彼女の待つ車へと急ぐ
彼女が笑った時安心した俺がいた
しかしまだ油断は出来ない
彼女には笑顔がよく似合う
隣で笑っていてくれなきゃ何かが欠けてしまった喪失感すら覚える