第18章 変わり行く心模様

「とにかく……っ……イルミさんが大好きなんです………」





散々泣いて綺麗に整頓された胸に残ったのは結局、私がずっと彼に抱き続けている莫大な好意だった



生きてきた人生の中で私は少ないながらも恋愛をしてきたけれど

独占欲や嫉妬心と自分は無縁だと思っていた


しかし人とは思わぬ所で世界が変わる


彼と出会ってからは些細な出来事の度に自分の知らなかった感情が次々に顔を出した


夜が明けなければ……なんて真剣に願ったり

未知の世界へ飛び出す勇気がみなぎったり

横顔を見詰めているだけで胸がキュンとして息が詰まったり


嫉妬……なんて決して美しい感情では無いけれど


深く深く愛してしまうと映る景色の色が変わる様に自分の感情もどんどん移り行くものなのかもしれない





涙声の愛の告白に彼の長い指が涙を掬う


長い睫毛を薄く伏せた美しい彼は全てを聞き終えてから只一言






「沙夜子は俺の奥さんでしょ。」






ポツリと小さな呟きを落として



私は途端にふにゃりと笑いながら泣いてしまった



先程迄の不毛な涙とは明らかに違う種類の涙





彼は私を幸せにする天才だ



たった一言


長々と語った私に投げ掛けられたのはたったの一言だった



特に甘い響きだった訳でもない


それでも、私には彼らしいぶっきらぼうな愛の言葉に聞こえたのだ






「うぅ"………っ……幸せです私………」


「はいはい。」


「大好きでずイルミさん」


「わかったから………ソフトクリーム食べる？」


「食べるぅ"………」


「じゃ、買ってくるから待ってなよ。」


「……っありがとうござい"ます」





嬉しくて心底嬉しくて……こんなに幸せでいいんだろうか…………


不安や悲しみが綺麗さっぱり消えて、気が付く頃には全身を包む熱い想いに充たされて


すっかり普段を取り戻した彼はきっとそんな私の胸の内までお見通しなのだろう