第18章 変わり行く心模様

「じゃあ何でなにも言わんかったんですか！！！」


「別に放っておけば良いと思って。」


「盗撮されたら駄目でしょ！！！」


「それは俺の世界の話しで此方で俺の写真は無価値だし。」




彼の言う事は全く持って真実だった

誰も彼の命を狙ったりしない平和な私の世界

私の世界だからこそあり得た事で此所が彼の世界なら今の現状は実現していないだろう

此所が異世界なら彼女達が声を掛ける事すら危うく

彼が言葉を返す事なんて絶対に…………


そんな事くらいちゃんとわかっているのに……





「…………っそんなん知ってます！！！………知ってるんです……うぅ"………っ！！」





何だか情けなくて、それでも腹立たしくて整理出来ない思考は涙となってボロボロと頬を伝った




「……ぅっ……何であの人達と話しなんかしたんですか………」



全て理解した上で残された嫉妬心と独占欲

こんな事を言ったって仕方がないと理解していても唇が勝手に言葉を紡ぎ、涙と共にボロボロと流れ出る


盗撮がトリガーとなったけれど私は彼が他の異性と接触した事が怒り泣いてしまうくらいには本当に嫌だったのだ




「何であの人達に"返事なんかしたんですか！！！」



ズキズキと痛む胸をそのままに強く地面を踏んづける


方々から刺さる視線なんて心底どうでも良くて何も言わない彼を泣き顔のまま睨み付ければ

クリクリとした大きな瞳で只視線を落とす彼の余裕な態度に益々苛立ってしまって



「………～っもう！！！何か言ってくださいよ"！！いっつも涼しい顔して！！！」



思わず逞しい胸板を叩いてしまった



…………………だけど彼は悪くない



彼は私の世界に順応し、私の望む平穏の為に事を荒立てなかった


彼が誰かを口説いた訳でもなければ誰かと密会していた訳でも、ましてや浮気をした訳でもない


ちょっと女の子と話していただけ

それも酷く一方通行な素っ気ない対応で


…………それなのに嫌だ嫌だと過剰反応し、束縛的な我が儘を彼にぶつけて私は一体何をしているんだろう………