ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第18章 変わり行く心模様
巻き髪を揺らした彼女が向けるスマホの角度は少し考えるとおかしなものだった
普通なら何か景色をバックに写真を撮る所を彼女達は目の前の清流をそのままに何を考えてか駐車場側……つまり私達がいる辺りをバックに自撮りしていたのだ
…………彼の写真を撮っている
そう確信した途端に頭は真っ白になり自分の感情にすら追い付けないまま歩み出していた
何をするとか何を言ってやろうとか何ひとつ考える暇もなく
距離にして約3mの空白は直ぐに埋まって気が付く頃には怪訝な表情を浮かべた彼女達の目の前に立っていたのだ
意識とは違い所から言葉が溢れている筈なのに声色にははっきりとした強い意思があり
握り締めた拳が僅かに震えている事に気が付いて私はこの時漸く自身の怒りが爆発しているのだと理解した
「貴女達盗撮しましたよね、やめてください、私の旦那さんです」
「……………え?」
「だから、あの人は私の旦那さんなんです。直ぐに写真消してください」
私が放ったのは力強くも冷静な言葉
今自分がどんな顔をしているのかは知らないが目の前の彼女達はポカンと目を見開いたまま口元にうっすらと笑みを浮かべて固まってしまった
落ち着け………と脳内警報は大音量で鳴り響いている筈なのに無意識的に我慢していた感情が次から次に溢れ出す
私は今にも叫び出してしまいそうだった
荒くなる呼吸をそのままに顔を上げれば彼はそんな私の突拍子もない行動を微動だにせず見据えていた
ゆるゆると地図を仕舞う余裕の仕草の後に気だるく踏み出された一歩
風に靡く長い髪をかき上げて覗いたその表情は私の導火線に火を付けた
口元に手を遣って心底おかしそうに小さく笑っていたのだ
私は彼が彼女達に言葉を発しているだけで嫌だった
うっとりとした瞳を知りながら距離を取らない態度が嫌だった
彼女達が彼に向ける女性的な視線や声色を目の前で見せられて不安だった
私は彼に釣り合わない………そんな事は幾度となく考えて来たけれど出来る限りポジティブに気を反らしていたのに
もしかしたら可愛いと思ったりするんだろうか……悪い気はしていないのかな……なんて考えながらも私はじっと堪えたのだ
その上彼の姿が盗撮されるなんて堪えられなかった