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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第18章 変わり行く心模様







川の上流に登れば間近に見えた水車小屋は本当に素敵だった

映画で使われた物がそのまま残されているらしく、農場の有名な観光スポットになっているのだが陸からは全貌が眺められないのでボートに乗った人だけの特権である

水草揺れるのどかな水流に佇む光景は日本の古き良き歴史を思わせて木々のざわめきも心地好く私は空を見上げて清々しい気分になった


晴れていて良かったと心底思いながらも自分自身の感情の起伏に苦笑いが漏れる


短時間で色々な感情に振り回されて疲れないのか、といつかの彼に言われたけれど

全く持ってその通りである



ここ数十分の内に嫉妬と独占欲に闘志を燃やして、その後思い直して純粋に景色を楽しんでいるだなんて………


いつも一定の彼から見れば最早情緒不安定の域だろう



もう少し落ち着きを持とう…………なんてこの時は考えていた筈なのに………………





_________"





私の身体は勝手に動いていた



ごちゃごちゃと考えるのが癖の私だが何を考えるよりも先に爪先が彼女達の方向へ進んでいたのだ



ボートを降りてから私達はいよいよ農場見学という事で軽い行き先会議を開いていた

勿論彼女達とはおさらばだ!と精々した晴れやかな気分だった

やっと彼を独り占めに出来るんだ……!と浮かれていたのも確かだ


気だるい仕草でパンフレットを眺める愛しの彼の隣で私だけに向けられる声色に浸りながらも何気無く視界に映った彼女達の姿


彼女達は思い出を残す様に自撮り棒で撮影会を開いていた

彼女達も遠方から旅行に来ているのだ

全く好きではないけれど華やかな女子旅も素敵だな………なんて余裕綽々な思考が巡っていたのは彼が私だけを見詰めてくれている安堵と
今この瞬間からは彼に接点の無い無害な人達だと認識していたからだった




「少し時間は遅くなるけどワサビ田を見てから昼食の方が良いと俺は思うのだけど。」


「………………」


「沙夜子?」




何故だか妙に違和感を感じて私は彼女達から視線を外せずにいた



そして違和感の正体を確信した時にはプツリと自分の中の何かが切れる音がした




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