ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第18章 変わり行く心模様
……………しかし私が彼に見惚れて頬を染めていたのもほんの束の間だった
爽やかな景色には似つかわしくない黄色い声が耳に飛び込んで来たのだ
「やばい!」と私と同レベルの語彙力の低さで騒ぐ彼女達を見詰めればその表情やチラリチラリと向けられる目線から、どうやら彼のキラースマイルを目撃したのだろうと推測出来て
私は途端に不愉快な気分になってしまった
………………彼は誰にでも笑顔を見せる愛想の良い人間では決してない
時折向けられる笑顔が段々と増えたのは紆余曲折を経て月日を重ねて信頼関係を築いたからこそ
謂わば私の努力の賜物であり
そんな私だって滅多に拝めないレアケースなのに………………
大体彼が微笑み掛けたのは私であって貴女達じゃない!!!!!!
……あぁ……………独占欲………………
今もキャッキャッと繰り広げられる話題の中心は清流ではなく彼だ
「腕もカッコいい」なんてピンポイントな声に反応してしまって隣の彼をチラリと盗み見れば
軽く腕捲りされたシャツから覗いた白い肌……薄く浮かんだ血管が逞しくて…………
(何で肌見せしてるんですかッ!!!!サービスせんといてよッ!!!!カッコいいなチクショウッ!!!!)
すっかりうんざりとした様子に戻っている彼の隣で理不尽な悪態を付いてしまう始末である
しかし私が冷静さを手放す事は無かった
彼は何をしていなくとも格好いい
毎日彼の傍にいる宇宙一幸運な私ですら毎秒思い知らされる事実だ
従って彼女達のリアクションは至極当たり前で
少々…………いや………あからさまに私に対しての態度は良いものではないけれど
大袈裟に騒ぐ彼女達を気にするだけ時間が勿体無いのかもしれない
それに今この瞬間は今しかない……そう考えると彼と過ごせる奇跡の様なこの時を目一杯楽しまなければ私自身が後悔してしまうと素直に思えた
何より、このボートを降りれば彼女達と彼の接触は無いという事実は私の心を落ち着かせてくれた
マイナスイオンたっぷりの空気を胸一杯に吸い込んで深く吐き出す
嫌な感情を吐き出す様に数回繰り返してみればモヤモヤとした黒い感情は随分と小さくなった気がした