ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第18章 変わり行く心模様
「ねぇイルミさ「クリアボート30分コースでお待ちのお客様お待たせ致しました!」
「行くよ。」
「………はい」
…………………鳴り響いたまま終わった
_________"
頑丈そうなゴム製のボートの底は一部透明になっていて川底が見えるという造りなのだが
ガラス張りじゃなく透明のポリプロピレンで気泡が入りまくっていてクリアに見える感じでは無かった
しかしながら底が透けてるとか透けていないとか寧ろ関係無い程に川はキラキラと透き通っていて
覗き見れば緩やかに揺蕩う水草の隙間から川底迄バッチリと肉眼で見て取れる程の清んだ美しさに私は本来の胸の高鳴りを取り戻しつつあった
流れに揺られて模様を変える水草の清流
皆揃いのライフジャケット姿の乗客達は私達の他男性二人組と彼女達
しかし彼女達をずっと意識していてはこんなに綺麗な思い出の1ぺージがくすんでしまう気がして
私は彼女達に集中していた意識を今の景色へと向ける事にした
彼はライフジャケットを心底小馬鹿にしたように眺めていたけれど何も言わずに着用してくれて
まぁ、言わずもがな似合わない訳だがそもそもライフジャケットが似合う人なんて早々いないだろう
オールが人数分行き渡った所でいよいよ出発
スタッフの方の掛け声と共に乗客が漕いで船を進めるシステムだ
緩やかなスタートを切ったボート
木々のトンネルを通り抜け心地好い水音が耳に届けば爽やかな風が吹き
川底までくっきりと見せるクリアな水の中、オールをさわさわと擽る水草が何とも言えない景色を作っている
戯れる様にボートの下を潜り抜けて気持ち良さそうに泳ぐ川魚の鱗がキラキラと輝いていて、私は思わず笑顔になった
意識を変えてしまえば見える世界も変わる
「綺麗…………魚、魚泳いでますよ!」
そんな私の言葉に魚影を追った彼の視線
「本当だね。」
いつもと変わらず無感動な声を落としたけれど偶然にも合わさった視線の先、彼は私の顔を見るなりふわりと優しく微笑んで
私はそのあまりもの美しさに不意打ちを食らって目の前がチカチカとした
微笑み等想像もつかない凛と冷たさを漂わせる姿から一変して細められた瞳に僅かな人間味を見せる一瞬
闇に生きる暗殺者は時にこの世の何よりも綺麗に笑うのだ