ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第17章 過保護さんと動揺
クリアボートの受け付けを済ませておくと話していた彼
テントの側に彼は確かに立っており、街中ですら異彩を放つ姿は遠くからでも直ぐに見付ける事が出来た
…………しかし………………
気が付けば無意識に急ぐ足は走り出し
軽く呼吸を乱しながら彼の背中へと辿り着いた時には胸のざわめきはより大きな物へと確実に変化していた
「すみません、お待たせしました!」
「お帰り。」
緩く此方を振り返った彼は普段と変わらぬ無表情を向けて
「出発には定員数を満たす必要があるらしい、あと2人集まるまで待機だってさ。」
淡々と状況の説明をしてくれたけれど
私にはもっとずっと気になる事があって曖昧に相槌を溢してからゆっくりとそちらへ視線を向けた
御手洗いから出て直ぐに見えたのはボートを待つ彼の姿とキャッキャッと騒ぐ女性三人の姿
彼は誰が見たって文句を付ける所が無い美形だと私は思う
現に街中や観光地で目立つ他、黄色い声が上がる事は日常的に度々ある事だ
私はその度に落ち着きを失いそうになりながらも本人である彼の清々しい程の素知らぬ顔に心を救われて来たけれど
今回は状況が少し違っていた
見た目から自身より年下だとわかる可愛らしい彼女達はこれまでの女性達とは違い
彼に声を掛けていたのだ
何処にいたって人目を惹く彼だがいつだって特有の雰囲気で人を寄り付かせない高嶺の花的な存在感を放っていた
そんな彼の隣にちょこまかと着いて回る私には別の視線が集中していたけれど彼と居られる贅沢な幸せの為なら気にしない事に決めた
私が彼の元へ駆け寄り会話を交わしたのはほんの束の間だったけれど私と彼は何らかの形で連れ合いなのだと存在を主張したつもりだった
だけど彼女達は近寄り難い雰囲気にも物怖じせず
「あのぉ……何処から来たんですか?」
「わぁ!知りたいです!」
「おいくつですか!」
私の存在を認識した上で無視したのだ
黄色く上がる声に薄く開かれた唇
「君達に関係無いでしょ。」
彼は質問に答えはしないもののしっかりと彼女達に言葉を返した
たったそれだけと言われるかもしれない
だけど私は
その短い一言にも色めく現状に酷く動揺していた