ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第17章 過保護さんと動揺
しかし気だるい雰囲気でかき上げられた黒髪から覗く横顔は心無し穏やかに見えて
彼も少なからず今を楽しんでいるのだと思えばテンションはうなぎ登りだ
……………と、その前に…………
「すみません、先にお手洗い行ってきます」
「受け付け済ませておくよ。」
「はい!お願いします!」
キャンピングカーはアパートと違わない寝心地を提供してくれる住処ではあるがお風呂は勿論、トイレも無い
車から降りたタイミングで尿意を解消するしか方法は無いのだ
楽しい分だけ多少の不便はあるもんだが慣れてしまえば……なんて考えながらも御手洗いにやって来たもうひとつの目的の為に鏡の前に立った
……………そう、キャンピングカーには全身鏡も存在しない
従って脳内で組み合わせた格好を可愛いだろうと想像して着る他無く
只でさえパーフェクトな彼の隣を歩くに相応しいのかちっともわからないというのは由々しき事態
という訳で御手洗いの度に鏡の前に立つのが日課になりつつある……
寒さを想定した今朝から衣装チェンジしていたので特にチェックしておきたかったというのも理由のひとつだった
ハンカチで手を拭きながらも写し出された自身の姿は淡いクリームホワイトのロングワンピースに身を包んでいる
白系のワンピースを大人女子が着こなすのは少し難しい気もするが可愛いフリルや装飾は一切無く
足首迄と長い裾、腰に合わせてぎゅっと絞られていながらもボディーラインを強調しないオーバーサイズの七分丈
背中が少し開いている分胸元はきっちり隠れた露出の然り気無さとシンプルなデザインは落ち着きと可愛らしさを巧く調和してくれていた
そして長く伸びた髪は編み込みポニーテールへまとめてうなじ見せを意識してみたのだが
「…………よし!」
足元のスニーカーも似合っていると確認して一人頷いた
幸せな事に私の大好き彼は嘘程美しい
(可愛い………可愛いよ私……大丈夫自信を持ちなッ!!!)
本気では無いけど私は時々こうして自分の自尊心を高める事にしているのだ
可愛いと暗示を掛ける事で自分を激励しているおまじない的なノリだがそんな事はさて置き
歩みを進める内に嫌に胸が騒いで行くのを感じた