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ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編

第17章 過保護さんと動揺







何の誤魔化しも無くすんなり頷いた彼の姿に私は少し笑った

今ではこんなに強い彼でも本当に辛い事が沢山あったのだろう

全く状況の違う私を過保護に心配してしまう程に

………だけど「辛かったんですね」なんて言ってしまえば彼は唇を閉ざしてしまいそうで

私は目の前の景色を見て思う事をそのまま口にした





「………紅葉ってこんなに綺麗なんですね」



純粋にそう思ったからこそ明るく跳ねた声に彼は遠く色付いた山肌を見上げて

「そうだね」と僅かに表情を緩めた




観光客が交わす笑い声の隙間にポツリポツリと落とされた落ち着いた声色



「同じ高山でもこうも違うとは思わなかったよ……うちの植物は色付いたりしないから。」



記憶を重ねる様に山波を見上げていた彼が悠々と私を視界に捉えた




視界を遮る物は何も無く、遠く高い筈の山頂を身近に感じて、標高ごとに色付きが違う紅葉はこの世界中で一番美しいんじゃないかとすら思う


高原の清々しさと美しい山の峰々の眺望が贅沢なこの場所は彼の知る世界の色をまたひとつ変えたのかもしれない




「だけどロープウェイは金儲けの為だね。」


「えー………そこは私の考え方でもいいじゃないですか!素敵な考え方だね流石って言ってくれてもいいのにぃ~……」


「馬鹿じゃないの。」




いつもより沢山喋ってくれた彼だけど、やはり顔色ひとつ変わらない人形の様な美しい見目のまま私に馬鹿と言って


世界で一番彼を知っている、なんて少し自惚れていた私はまだまだ知らない彼の心に少し触れたみたいで

胸があたたかいような少し切ないような感慨に浸った



「そろそろ行こうか。」



なんて当たり前の様に私へ手を差し伸べた彼の姿に私は思わず目を細めた

白い肌が透き通ってくっきりと大きな瞳がより漆黒を浮かべる姿があまりにも儚くて

本来ならこの世界に存在していない筈の男性の手を私は確かめる様にぎゅっと握った






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