ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第17章 過保護さんと動揺
まんじりとも動きそうも無い彼の雰囲気から私は既に諦めモードになっていた
理由については微妙だけど彼はいつでも私に付き合ってくれる優しい人だし
駄目だ、と言葉に出して伝えてくれた時には諦めるのも肝心かもしれない……なんてぼんやり考えていると
「標高3722m。」
彼は突然ポツリと呟いた
………………標高3722m……………?
私達が今いる場所は標高2612mだ
何かの聞き間違えだろうか……なんて考えていたのも束の間
「俺の実家がある山の標高だよ。」
気だるそうに瞳を細めた彼は淡々と言を紡いだ
「……………え?!」
「ククルーマウンテンはここよりずっと高いんだ。」
私はかなりの衝撃を受けていた
彼の一族がククルーマウンテンという山のある土地を住居としている事は勿論知っていたけれど
それを直接本人の口から聞くのは何とも不思議な感慨深さがあった
ドラゴンや光る花、摩訶不思議な生物が巣食う彼の世界で聞いたならもっと現実味を帯びたのかもしれない
しかしそれを私の世界で聞いたなら全ておとぎ話の様な響きで…………彼はそんな異世界の住民なのだと再確認させられた様だった
それと同時に驚いたのは彼の家族が所有する山の高さである
馬鹿な私には数で伝えられてもどれ程のものなのかわからない
だけど生まれて初めて見たこの高原の景色より高く聳えているのだと想像して
その巨大さに圧倒されてしまったのだ
「…………3000」
なんて目を見開きながらポカンと繰り返す私を横目に彼は話しを続けた
「高地トレーニングってわかる?」
「………高地トレーニング……あんまり……」
私の脳裏に浮かんだのはオリンピックに出場する様な選手が特殊な環境でトレーニングしている、なんていうニュースだった
だけど内容まで理解しているかと聞かれれば全くで
続きを促す様に彼を見詰めれば彼はそんな私にチラリと視線を流した後に悠々と唇を開いた
「主に低酸素、低圧、低温の三つが揃う環境の事で効果的な標高は1500から3000mとされている。」
「持久力や酸素運搬の消費力アップが目的だから基礎的なトレーニングだよ。」
「……………持久力……」