第23章 出発準備
リネルが無事にゾルディック家へ帰宅出来た頃には、既に空が白んでいた。
一徹や二徹 よくある事で普段は何ともないのだが、昨夜は色々とめまぐるしかった。まずはゆっくり休みたい思いで自室までの道を急ぐ。早朝だからか廊下にいる使用人の数も少なく、挨拶も程々に足を急かした。
ふと得るのは強い気配だ。長い廊下の先からは さすがに無視は出来ない人物が颯爽と歩いてくる姿が目に入った。
「おはようございます……」
「ああ、おはよう」
シルバに軽く会釈をし、形式めいた挨拶をした。
普段滅多に会うことはないが、改めて面と向かえば その強靭な風格に押し負けそうになる。
リネルはにこりと作り笑顔を見せてから、その場を立ち去ろうとした。
「どうだ。ここでの暮らしは」
「え……あ、はい。色々お気遣いもしてもらって、助かっています」
「そうか」
気にかけてくれたのかと思うとありがたい気持ちもあり、易々と去る訳にもいかず リネルはシルバと立ち話をする事になった。
シルバはいくつかの質問をくれる。
生活が一変した事によって仕事への影響は大丈夫かや、服毒生活による身体の具合など どれもこちらの様子を気遣ってくれるものだった。
リネルはもらう問いに対して、現状のありのままの様子を語っていった。
「1つ気になることがある」
「はい。なんでしょうか」
「イルミとは今後うまくやれるのか?」
「え?……」
リネルにすればかなり際どい質問だ。
何故今更にそんな事を言い出すのか、何か感づかれているのか。そんな疑念を抱きつい口籠ってしまう。
シルバは腕を組み、リネルを見下ろし言った。
「お前達の結婚、お互いに想い合って という訳ではないんだろう」
「……はい、ばれていたんですね……」
「キキョウは疑っていないようだがな。見ていればなんとなくわかる」
嘘をついても無駄だろう。
リネルは結婚に至った経緯をシルバに素直に話して聞かせた。