第22章 悪戯
先程のホテルの一室にて。
意外にも、とろける時間はそう長くは続かなかった。
「ねーぇ 遅いよ!そろそろチェックなんだけど」
突如部屋にはノックの音と声がする、リネルはビクリと肩を揺らした。クロロの視線がドアの方へ飛ぶ。
「……この声、シャル?……」
きまづそうにクロロの顔を見上げると、これにはクロロもさすがに堪忍した様子。ふうと息をついている。
「あれっ 寝てんの!?」
「まさか何かしてんじゃないだろうね」
続いて聞こえるのはマチの声だ。
クロロはリネルの腕を引き 素早く身体を起こさせた。
耳元へ顔を寄せられる。またもクロロの香りが近付き、リネルは身体を緊張させた。微かな声で囁かれた。
「邪魔が入ったな」
「……じゃ、邪魔って……」
「消えるか。このまま」
「え」
ふと顔を上げれば、真っ直ぐクロロと目が合った。
クロロとの急展開に焦りつつも、入り口前からストップをかけてくれる展開にほっとしつつも、心のどこかで微かに複雑に思う本心も、リネルの中にはごちゃごちゃな感情が渦巻いていた。
クロロは片手一つで、リネルの輪郭を取る。挨拶みたいな可愛らしいキスを一つだけ、唇のすぐ隣に落としてくれた。
「返事が遅い。タイムアップだ」
クロロはそのままドアを開け、迎えの2人に応じてしまった。
「遅。なんか乱れてるし……寝てたの?」
「ああ、少しな」
「リネルは?まさかと思うケドなんかしたんじゃないだろうね」
「ふ、それはどうだろうな?」
いい加減、現実に戻る時間のようだ。
平常心に戻すべく頭を切り替えなければならない。
現在の上の様子を話して聞かせるシャルナークの声と、大丈夫かと話しかけてくるマチに応じながら 何度も自分に言い聞かせた。