第22章 悪戯
クロロの表情は満悦そうで ひどく甘ったるい。
きっとクロロはこの状況を楽しんでいるだけ、なんとなくはわかっていてもそれを汲み取り一瞥出来る言葉が何なのか どうしてもわからなかった。
クロロは俄かに身を重ねてくる。
感じる身体の感触を受けてリネルの身体がびくりと固くなる。ふんわり鼻につく微かな香りは いつもクロロが纏うもので、そこに閉じ込められるようで逃げ場の無さを感じざるを得なかった。
クロロに拒否を呈するよう、リネルは下手に片手を伸ばした。
「や、やめて……ダメっ……っ」
「そう緊張するな」
「!」
伸ばした手は簡単にクロロに捕らえられてしまった。
クロロはそっと瞳を細め、リネルの手のひらの中に丁寧なキスを落としてくれる。
触れる唇の感触が柔く温かくて、指先から頭の中までが じんじん痺れてしまいそうだった。
「……なっ……や、やめてよ。こういうの、もういい加減にし…………」
クロロの人差し指が自身の唇へ伸び、縦に添えられてゆく。
まばたきを忘れ、つい目を奪われてしまう。クロロには動作までも無駄なく洗練された美しさがある。
「いいから黙れ。リネル」
溶かすような声色で、瞳を綻ばせながら。
なんとも悪戯めいた仕草を見せられては 身動きの仕方が本気で見えなくなってしまう。
「クロロ……冗談でしょ……っ」
「もちろん冗談だ。…………本気にするなよ?」
クロロの片手は、難なくリネルの頰を包んでくる。
前言撤回だ。この人は少しも紳士的なんかじゃない、なんてタチの悪いことをするのだろう。そう思わずにはいられなかった。