第22章 悪戯
「……今、何時?私どれくらい寝てた?」
「お前が潰れてから2時間くらいか」
「あ……そっか、そんなに時間たってないんだ よかった」
てっきり明方かとすら思っていたので 安心から肩を下ろす。リネルはまだ揺れる感覚の残る脚でベッドから降りた。
クロロはやはり、安定してクロロのようだ。
こんな状況でも下手な遊びに手を出すこともなく、きちんと介抱してくれたみたいだ。それはとても頼もしくも、ほんの少しだけ寂しい気持ちにならなくもなかった。
「……でもさ、カルト酷くない?いくら私が嫌いでもあっさり置いていくなんて」
「お前は本当に覚えてないんだな」
溜息を吐くクロロは、やや声をきつくする。
これは彼が説教じみたことを言う時の声色だった。
「お前が帰らないってごねて仕方ないから、とりあえずここで介抱してやったんだろう」
「え?!そうなの?!……ゴメン ほんと……」
どうやら、今夜は色々と調子に乗りすぎたみたいだ。
リネルはますます肩身の狭い思いで 何度も謝罪を述べてから、小声で口にした。
「私、帰らなきゃ……今日の粗相についてはいずれ埋め合わせるか………………」
強く腕を引かれた。
一瞬の浮遊感の後、次の瞬間には クロロの顔と見慣れない天井が広がっていた。元々淡い部屋の照明はクロロの身により遮られ、薄暗い影の中では彼の秀麗な顔立ちがえらく際立って見える。
幾ら何でもこの展開はまずいだろう。
リネルはごくりと息を飲む、こんな情景を見つめ返すには恐ろしく勇気がいる。クロロは少々乱れた髪を手ぐしで崩し、勝ち誇る表情でリネルを見下ろしていた。
「な、なに、ふざけないで……」
「それはオレの台詞だな」
「なっ なんで!!」
「この状況で大人しく帰してもらえると思っているのか?」
「ちょっと、それどういう意味……」
リネルの声は派手に上ずっているし、動揺している様は明白だった。それを面白がるように クロロは一気に声を低くする。
「さっきは散々オレに甘えておきながら、起きたら他の男と間違えられたんじゃさすがに面白くない」
「……っそれは…、ごめんってば……」