第21章 酔い
「でも、そんなに可愛がってたならば繋いでおかなくていいのかい?」
「繋ぐ必要がないからな」
「イルミって融通効かなそうだし 下手するとリネル殺られちゃうかもね」
「リネルはそこまでの単細胞でもない。それにオレはコイツの方が一枚上手だと踏んでいるが?」
「過保護な上に親バカなんだね」
静かに進む2人の会話の間で、リネルが少し頭を上げた。
眠気の襲う意識の中、頭上から降りてくる懐かしい声がえらく心地よく響いた。
優しく、頼り甲斐があり、ひどくドキドキと心を乱す声の主は 確認せずともリネルにとっては1人だけだ。
まどろみと混ざりながら リネルはそっと頭を起こした。
「…クロロ…?」
「起きたのか?」
目の前が夢心地に霞んでいる。クロロの表情までを視界に捉えることは出来てはいなかったが その空気感だけで安心材料としては十分だった。
「帰れるか?」
「…かえるって、…どこに…」
「どこって、お前な」
「…クロロと、一緒にいれたらいいのに…」
「寝言は寝て言うんだな」
「…寝てない!…クロロと、一緒にいたいのに…」
酔ってはいれど本心かも判断出来ないリネルの意味ありげな言葉を受け、クロロは呆れ顔、ヒソカに至っては愉しげに満面の笑みだ。
「これはこれは、面白い展開だ」
「面倒な、の間違いだな。………マチ」
クロロはふいと顎先をあげ、向かいの席からマチを呼ぶ。マチはするりとやってきて ヒソカとリネルの間に押し入ってきた。
「リネル起きたの?ほんっと昔っからアンタはクロロにべったりだね。カルトもそろそろ迎え呼んで帰るって、リネルも連れてってもらったら?」
「だそうだリネル。大人しく帰れ」
「…………」
リネルはいつの間にか また寝入っている。マチはため息をつきながらリネルを揺り起した。