第21章 酔い
あれから数時間後。
物凄いスピードで強化された酒を煽りまくったせいなのか、2人は 今や完全に酒にやられ仲良くテーブルに突っ伏していた。
初めのうちは面白がって見ていたメンバーも、均衡状態が続く2人に飽きたのか 現在2人の側に残るのは審判の立ち位置にいたシャルナークだけだった。シャルナークは頬杖をつき、呆れた顔をしていた。
「あーあ、2人ともかなり呑んだけど大丈夫?これ今日は相討ちって事でいいよね?」
「…………」
「…………」
「応答もないか。まあ しばらくすれば回復するかな」
シャルナークは自身のグラスを口に運んだ。
小顔を赤くするカルトを女性陣に預け、リネルの前に一杯の水を差し出した。
「リネル、ほら水飲める?」
「……まだお酒……のめる、もん……」
「ダメだね こりゃ」
シャルナークは呆れた声とともに、お冷グラスを置いた。
人が去り、静かになった休憩時間のリネルの側にヒソカがやって来る。隣に腰をおろしてきた。
「スキがありすぎるって前に忠告したのに」
「…………」
「…………簡単すぎてヤる気も失せちゃうな」
ヒソカはリネルへ片手を伸ばす。丸い後頭部へ指先が伸びると同時に、逆の隣にはクロロが近付いていた。
「やけに構うな、リネルに」
「……まあね」
「お前の趣味はわからんが、リネルはそこまでのレベルでもないし女にしても可愛げがないぞ」
「おや、詳しいね。リネルの結婚相手ってクロロだったっけ?」
「コイツとは古い付き合いなだけだ」
クロロの落ち着き払った雰囲気は相変わらずだった。目配せ一つでリネルを見る様には 揺るがぬ絶対的余裕が見て取れる。
ヒソカは瞬時にそれを察し、見せつけるよう片手でリネルの頭に触れる。口元には笑みを浮かべた。
「なるほど。……さてはAってクロロの事か」
「何だって?」
「いや、こっちの話。リネルが要所でスキだらけなのはクロロが甘やかしてたせいもあるかもね」
「ふ、完全否定は出来ないがな」
嗜める口調でそう言うクロロは、黒い瞳を微かに伏せた。