第21章 酔い
席に戻るとシャルナークがリネルの前にグラスを置いてくれる、そのまま隣に腰掛けてきた。
「リネルってヒソカと知り合いだったの?」
「うん。ハンター試験の時に、ちょっとね」
「うわぁ 懐いな ハンター試験!ヒソカと同期なの?」
「ううん。ヒソカが受験した期に試験官の手伝いやらされてたから」
「へえー」
シャルナークは感心した様子でそう言い、少しだけ顔を寄せてくる。そして小声で告げた。
「カルトも知り合い?」
「え?」
「なんかずーっと見てるよね リネルの事」
「…………」
店に来た時から視線は感じていたのだが。
あえて指摘をされると相変わらず、カルトの視線は鋭く痛かった。
リネルはふうと息をつき 視線の先に目を向ける。
この場にて初めて目が合うや否や、カルトは軽そうな身体をひらりと浮かせリネルの前にやってきた。
「ボクのこと無視してたでしょ」
「え?…そういうわけじゃないんだけど…」
いきなりタメ口で話しかけられた事にリネルは少々驚いた。
ゾルディック家の第5子であるカルトが旅団にいる件は クロロから聞き知ってはいたが、実際にカルトと顔を合わせるのは先日イルミの要望でククルーマウンテンへ挨拶に行った日以来で、直に会うのは今日が2度目だ。
先のあの場ではお互いに紹介されはしたものの、直接会話をしたわけでもなく 大人しく人形のように座っていた印象しかなかった。
2人を交互に見て、シャルナークが言う。
「やっぱり知り合いなんだ。2人」
「知り合いっていうか
「知り合いなんかじゃないよ。リネルなんて」
食い気味にそう言われ リネルは思い切り口ごもる。不服そうに大きな瞳を向けてくるカルトを見つめた。
「……あの、ゴメンね。挨拶のタイミング逃しちゃって 別に無視してたワケじゃなくて……」
「いいよ。挨拶なんて欲しくないし」
「え、なになに?どういうこと?」
シャルナークは不思議そうに両者の顔を見比べた。リネルがそれに答えた。
「私、カルトのお義姉さんになったんだよね」
「ボクはそんなの認めてないから」
カルトはきっぱりそう言い ツンと顔をそらせていた。リネルは顎に手を添えて、考えるそぶりを見せた。