第20章 幻影旅団
リネルの口から出てくるのは溜息だった。
相談をするには間違った相手だったのかと 口を噤んだ。どう頑張ってもリネルには ヒソカのように思い切れる程、大胆にはなれないだろう。
「選択肢を増やすのもアリだよ」
「どういう事?」
「ひとつしか選べないなら尚更、AとBの他にC、D、E……たくさん並べてしっかり吟味して決めなきゃね」
「…………確かにね」
リネルの言いたい意図をヒソカは理解してくれているのかはわからないが。ヒソカのいう事がさも正論に聞こえてしまった。
「なんか今日のヒソカ、変」
「おや、そう?」
「なんて言うか……話聞いてくれたり……」
「リネルが聞いて欲しそうだから」
相変わらずヒソカの言葉は意味深だ。訝しむ顔付きを持って リネルはありありとヒソカを見上げた。ヒソカは光る視線で持って 真っ直ぐそれに答えてくれる。
「……いつもそうやって、……優しければいいのに」
「リネルには比較的優しいだろう?」
「……嘘くさ」
「ウソじゃないよ。チョット気まぐれなだけ」
こうして見つめ合うには ヒソカの瞳は鋭くも艶があり過ぎる。リネルはすぐに、目線を逃した。
突如、冷えた強い風が一気に通り抜けた。
「っ……!」
風に舞い上がる髪を整えようとするや否や、その一筋が ヒソカの指先に微かに捕まっていた事に気付いた。
まるで落ち葉を弄ぶよう、ヒソカにくい と髪を引かれる。
「イルミに飽きたらボクの所においでよ」
「…………は?」
いきなり言われた言葉にリネルは目を丸くする。
「キミのそういう、狡さや弱さ……ボクはそのまま受け入れてあげる。優柔不断のままでも構わないよ」
「……はぁ。そういう台詞は今の私には耳に毒なんだけど。不覚にも惑わされそう」
「お互いがお互いに飽きるまで、心ゆくまで堪能しよう。……色々ね♡」
「色々?」
「そう、色々」
「……色々って?」
「クク、…………今度ボクの所に遊びにおいで。その時教えてあげる」
ヒソカは満足そうに低く囁き、リネルの髪を簡単に手放した。