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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第19章 お祝い


そして仕事終わり。
リネルはビスケが指定する店に向かった。その店は完全予約制のハンターライセンス所持者専用の居酒屋で、リネルは以前にも職場の宴会で一度だけ使った事がある店舗だ。
ビル上階が居酒屋で、下にはホテルやジム マッサージ店が完備され使い勝手のよい人気のスポットだった。

「ビスケ お疲れ様ー!」

「お疲れ。しかしまぁホントとんとん急展開よねー アンタ」

「私が1番驚いてるけどね」

「ふ〜ん どうだか」

席に着くと挨拶も程々に、ビスケはリネルの指輪を目を止める。丸い瞳を大きくさせて身を乗り出して来た。

「あら、いいのもらったじゃないの!」

「……ああ、これね」

自分で気に入りプレゼントされたその指輪に、ちらりと視線を落とした。キザな渡され方をしただけに 思い出すと顔が熱くなる思いだ。
リネルはそれを誤魔化すようビスケに笑顔を向け、今日の誘いの礼を述べた。

「ビスケ、今日はお祝いにって誘ってくれてありがとう」

「あら、なんかちょっと素直になったんじゃないの?」

「えっ そうかな?!」

きょとんとした顔をするリネルに、ビスケはふふんと含み笑いを返す。

「甘え上手な素直な女は愛されるわさ?幸せになんなさいな」

「いや別に、甘えないけどね」

「そこがダメな所だわさ!リネルの」

「いいの!」

早速飲み物や食べ物を注文し、近々の結婚話やハンター協会の噂話などに面白おかしく花を咲かせた。





ビスケと呑み進めていた折、何やら店の入り口付近がガヤガヤと賑わってくる。リネルはつまみに届いた魚の切り身を取り分けながら言う。

「なんだろう、団体さんかな?」

「そうかもね。でも忘年会の季節でもないとは思うけどねぇ」

ワイワイと騒がしい雰囲気の中で、一際目立っていた声につい耳を傾ける。何やら 聞いたことがあるようなないような、視線もそちらへ飛ばしてみた。


「お前らは何で勝手に缶ビール持ち込んでるの?!あ、ほらそこ!!すぐ喧嘩するなって今日は一応外なんだからさ。も〜うるさいな、とりあえず席着くまで待てってば!」

「…………この声って」

やはり聞き覚えがある。身を伸ばして店の入り口付近を覗いた。そこには想像通りの人物がいるではないか。驚きで目が点になる。



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