第19章 お祝い
「ちゃんと別のプレゼントも用意してありますからご安心を。その2です、というかこれが本命のプレゼントです」
「……ふ、2つも?……」
「ええ。日頃お世話になっているリネルさんの為ですから。これでも僕は貴女にかなり甘いつもりですよ」
「それは半分に聞いておきますが。……」
パリストンの顔を見れば、得意のアイドルスマイルだ。本人の性格を知っていればこそ 完璧過ぎるその笑顔が、むしろ違和感で怖くなる。この人が100%の信用に足るかは疑問が残るところだが まさか2つもプレゼントを用意してくれているとは思いもよらず、リネルは口をぽかりと開けた。
日頃は面倒な仕事を回されたり 理不尽な雑務を押し付けられたりと文句は無きにしも非ずだが、成り行きの結婚をわざわざ祝ってくれるというなら嬉しいものがある。
「ありがとうございます……びっくりしました」
「良かった。サプライズになったかな?」
パリストンは注がれたシャンパングラスに手を伸ばしていた。リネルはパリストンに上目遣いを向ける。
「開けてみてもいいですか?」
「ええ。どうぞ」
長い指先を優雅に差し出すパリストンの仕草を受け、リネルはキレイに巻かれたリボンを解いた。
外装を丁寧に剥がして箱の蓋を開けるや否やリネルの顔色が変わる、表情はぴきんと固まっていた。
「何ですか……コレ……」
「あれ、そういうのご存知ないですか?」
「ご存知はご存知ですけど、…あっ いや、存在自体はご存知なんですけど実際には体験とかは知らな………………てゆうかなんでこんなこと私が説明しなきゃならないんですか!!!」
「あはは、そういう所真面目でカワイイですよねーリネルさんは。なんなら僕が使い方レクチャーしましょうか?」
「……じょ、冗談でしょう……」
あざとくもとぼけたお茶目な所がある人なのは知ってはいたが。こんなに雰囲気あるレストランの中で、きらめく笑顔と共に「大人の玩具セット」をプレゼントとして差し出すとはとんでもない爆弾投下と言える。周りの客やウエイターに見られてやいないかも気になる訳で、リネルは乱暴に箱の蓋を閉じた。