第19章 お祝い
そして職場へ。
結局は書類提出も必要なくなったため、普段のペースで仕事を進めていると 上司であるパリストンがやって来る。
「リネルさん、ご結婚おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「入籍は近日中だって言ってましたよね?お祝いということで今日のランチは僕がご馳走しますから ご一緒にどうですか?」
「えっ」
パリストンの爽やかな笑顔を怪しむよう、リネルは軽く眉を寄せて言った。
「さてはまた何か面倒な仕事でも……?」
「いやだなーそんな事ないですよ。純粋にリネルさんのご結婚をお祝いしようとしているんです」
パリストンといえばかなりの美食家であるとの噂もある、ついて行って損はないだろう。半信半疑ではありつつも、その日の昼食はパリストンと同行する事にした。
パリストンはこんな時でも抜かりない。
高層ビルのいかにも女性が喜びそうな高級感溢れるレストランに連れて来られた。白いクロスがかかる向かい合ったテーブル席につき1番いいコース料理の注文を終えた後で、パリストンはキレイにファイリングされた資料を取り出してきた。
「これ、プレゼントその1です」
「……明らかに仕事臭あるんですけど。そしてその1ってなんですか」
「もう、早とちりしないで下さいよー 前にダブルの資格欲しいって言ってましたよね?結婚のお祝いにと思って僕自ら必勝攻略マニュアルを作成しました!」
「え……っ」
「あれ、お気に召しませんか?」
パリストンは眉をハの字にして、しゅんと心配そうな顔をする。リネルは分厚い資料を受け取りながら言った。
「いえ、ありがとうございます。これはこれですごく嬉しいんですけど。……なんかこう、結婚のお祝いって言うより昇進へのプレッシャーと景気付けみたいな、なんていうか」
「あはは、意外とハッキリ言いますよね リネルさんは」
パリストンは微塵も怯まない。再びにこりと笑顔を浮かべ どこから用意したのかキレイに包装された箱状の物を取り出した。それをすっとこちらに差し出してくる。