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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第18章 引っ越し


後日のこと。

イルミの指示通り、マンションの貸出先についてをミルキに相談すると お安い御用と言わんばかりにすんなりリネルの希望を受けてくれた。報酬として高額を請求されるかと思いきや ミルキが欲しがったのは必要時にハンター協会が持つ情報の開示だった。内容によれどもリネルにとったらそれは朝飯前である。
ミルキとは今後もうまくやっていけそうな気がした。

ミルキの仕事ぶりは思いのほか優秀で、マンションの貸出先は好条件で早急に決まってしまう事となる。冗談半分ではあったのだが イルミを家に招く間もなく、引越しの目処はすぐにたってしまった。

ここで揉めたのが部屋割りであった。
生活スタイルも違うので別部屋でいいと主張する当人達に対し、母のキキョウが難色を示した。新婚でありながら別部屋なんて言語道断との意見を提示し両者なかなか譲らなかった。

仕方なしの妥協点として、部屋は隣通しで間の壁に扉がひとつという簡易工事を行うことで 何とか合意をする事になった。

一応はプライバシーの守られる空間を確保することが出来、リネルはほっと一息をつく。

引越しは何度か経験済みであるし、今回は荷物だけあれば何とでもなる訳で 手際よくどんどん進み、リネルはすぐにゾルティッ家の住人になることになってしまった。


そしてついに引越し当日の夜。
前のマンションよりも随分広い新しい部屋に一人になった。リネルは大きな伸びをしたあと ソファにごろりと横になった。

「ふぅ〜……」

仕事の合間を継ぎはぎしての引越し準備もようやくこれでひと段落かと思うと、達成感と安堵が胸を満たしてくれる。天井を見つめながら しんと静かな空間に身を任せ、そっと目を閉じた。


しばらくするとノックの音。
イルミが部屋に入ってくる。リネルは薄く目をあけた。

「リネルって家ではそんななの?」

「そんなってー?」

「だらけてるというか。寝るならベッドで寝ればいいのに」

「……ちょっと休憩してるだけ!」

この貴族が住むような規模の屋敷では 自分の部屋とはいえベッド以外の場所でくつろぐのはマナー違反なのだろうか。一応、リネルはゆっくり身体を起こした。イルミはそれを褒める事もせず、自身の要件を投げてくる。

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