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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第16章 独占欲


リネルの中にあるのはいつだってそれなりや成り行きばかりだ。そこそこ上手く立ち回れて、そこそこ器用に生きていられたらそれで良いと思っていた。
昨夜のヒソカとのことや昼間の件のせいなのか そう決めて生きてきたはずなのに、どうにも今夜は気持ちが揺らめいて仕方なかった。

「私にはそういうハッキリした目的がないんだよね……だからなのかな、自分で自分の限界に線引いちゃうし、それなりでいいかなぁって思っちゃう……イルミは私が甘いって言ったけどそういうことなんだよねきっと……」

イルミは静かにグラスを置く。
急に語り出すリネルを見下ろし、腕を組んでいる。

「オレに人生相談しようって言うの?どうかしてるんじゃない?」

「…かもね…」

頭にあるのはもやもやするだけの感情だ。
カッコつけた理想もないのだから、これではハンターが聞いて呆れると思う。リネルは残るワインをぐいぐい一気に飲み干した。

「……おかわり!」

赤ら顔でイルミに空のグラスを差し出せば、無言で中身を満たしてくれる。そのまま自身のグラスにもワインを注ぎ足した後、イルミは脚を組み替えた。

「まぁオレはやっぱり甘いとは思うけどね。自分なりにそれでやってきたならリネルはそのままでもいいんじゃないの?」

「え、…………」

「どうせ言っても聞かなそうだし」

イルミは度々グラスを傾け出す。リネルは身を乗り出して、イルミの顔を覗き込む。

「……励ましてくれてるの?それ」

「別に。負けは負けらしくそれを認めさせてあげただけ」

リネルは眉を寄せる。すぐさまイルミに反論を返す。

「負けとか、そういうのはヤダ!人生においては勝ち組でいたい!」

「オレから見れば負けてるよ。色々」

「…っ私の方がたくさん呑んでるし!」

「てゆーかこれは勝負じゃないし。」

「イルミみたいな堅苦しいばかりの人生が正解かはわからないよ!」

「生きる目的が明確になっていれば、それでいいと思うけど」

きっとまたお互いの言い分は平行線。揉めるだけ労力の無駄なのだ、リネルは目線を前に戻した。
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