第16章 独占欲
無事に例の客間についた。
ドアをノックし中に入ればすでにイルミの姿がある。テーブルの側には可動式ワゴンが置かれ、その上に食べ物や飲み物が並んでいた。
「遅かったね。迷ったの?」
「少し…あ、でもキルアに会って道聞いたから」
「そう。食べなよ」
イルミが指差す先に目を向けた。ワゴンにはサンドイッチやソーセージ、フルーツやナッツなど簡単に食べられそうな食事が用意されている。
ふと、リネルはワインボトルを目に止めた。フルボディの赤ワインでそこそこの年代物、それなりの値段もしそうである。
「……ちょっと呑んでもいい?」
「いいけど。昨日も呑んでたんじゃないの?」
「まぁいいじゃん。イルミも一緒に呑もうよ」
ワインボトルとグラスを二つ手に取った。
それをソファ前のテーブル置き、適当に料理を並べてみれば 十分華やいだ雰囲気が出た。
イルミの隣に腰を下ろし、既に抜かれているコルクを外せば深い香りが漂ってくる。
そういえば、イルミと一緒に酒を呑むのは初めてだ。イルミのグラスにワインを注ぎながらそう気付いた。
「イルミってお酒に酔う?」
「酔わないよ」
「やっぱり。普段の顔が崩れたら面白いな〜と思ったのに」
「そんなことで隙見せてられないし」
顔色一つ変えずに淡々と呑み進めるイルミを時折ちらちら伺いながら、前回同様にリネルは話題を探してみる。
話が弾む仲ではないし、無言の時間も多い。
だが、それなりの会話も出来てはいる。
実に変な気分だった。
少々酒が回ってきたのか、頭がぼんやりしてくる。リネルは急に黙り込むと 視線を上げてじっとイルミの横顔を見つめる。
「なに見てるの?」
「イルミって、何のためにそこまで突き詰めて強くなったの?」
「そうだな。必然的に身に付いた…と言えばそうだけど、目的と言われると、家族のため家のため、かな」
「そっか……」
「なに?」
「いや……」
はっきりと告げられる信念を持つイルミのことを、少々羨ましく思えた。