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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第15章 価値観


イルミの背中を見送り、前回泊まった部屋へ向かおうとするが案の定道に迷ってしまった。いかんせん、この屋敷は広過ぎてリネルにすれば迷路のように思える。
広い廊下をうろうろしていると後ろから声を掛けられた。

「リネルじゃん。何してんの?」

「……あ、キルア!」

キルアは素早くこちらに近付いてくる。
困り顔で笑うリネルを訝しむ顔つきで睨み、キルアは視線を鋭くする。リネルの首元を指差して言った。

「どうした?それ」

「あ〜……やっぱ痣になってるか……」

指摘の先に触れてみれば鈍い痛みがある。
昼寝、ふとした言い合いの折にイルミにつけられた痣だと説明すると キルアは呆れた顔を見せた。

「容赦ねぇなあの野郎。何かあったらすぐ言えよ?」

「…ありがとうキルア。超心強い」

リネルはにこりと笑顔を見せた。キルアは少し目線を外す、そして大きな溜息をついた。

「しっかし何でアイツと結婚すんの?」

「なんていうか、成り行きで…」

「もっとこう良さそうなの幾らでもいんだろ、メガネ兄さんとか」

「メガネって、…ウイングさん?私がビスケに怒られそう」

「え、逆じゃねーの?」

「ビスケって私になんか厳しいんだもん」

キルアとこうした他愛ない立ち話が出来るとは意外だった。会話の間を繋ぎ、キルアはリネルに指摘を投げてくる。

「でもさー」

「ん?」

「なんつーかリネルって……ゴンみてぇだよな、それなりにしっかりしてそうでもちゃんと見張ってないとヤバいっつーか」

「私そこまで心配される感じ?そんなことないんだけどな」

何故だろうか。自分の思う自己評価と他人からの見え方の違いを再認識させられる、昨日今日でそんなシーンがやたら続くのは因果か何かの前兆か。はたまた今後の自分の方向性を考え直せとの天の声でもあるのか。怖くも不思議な説得力がある気がする。

リネルはキルアに礼を述べ、別れの挨拶をした。


「キルアありがとね。また話聞いてね、あとこれからよろしくね!」

「ああ。まぁ頑張れよ」

キルアは「客間は向かって突き当たりを右、そのまま一つ目を右手、次は二つ目を左」と道案内をくれる。リネルはそれを頭に叩き込み、キルアとは逆の方向に歩き出した。


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