第15章 価値観
先程までは決して悪くはない雰囲気で通りを歩いていたはずの2人だったが。今現在は大通りから少し離れた路地にて睨み合っている。
発端は 歩数差に遅れていたリネルが、安そうなチンピラ男に絡まれたことだ。いちハンターではあるものの 外見で言えばリネルはただの20歳前後の女のコだ。身体つきだって屈強には程遠くどちらかと言えば細やかな方、故にその外見からか、そういった輩に絡まれる場合がある。
もちろんリネルの実力を持ってすれば一般人など簡単に散らせるのだが、本日は人の多い街中のため手荒なことは避けたかった。
もたつくリネルの元に戻ったイルミにまで ぎゃあぎゃあ大声で絡む男に対し、イルミが念針を取り出したのを見て リネルが無理矢理止めに入った訳だ。その場を強引に収めて逃げるように場を去ったのだが そこから言い合いになったのだった。
「やたら殺すことない!あんなの適当にやり過ごせばいいでしょ!」
「誰も殺そうとしたなんて言ってないよ。ま、殺ってもいいんだけど」
「とにかく一般人に限らずだけど無駄な殺しは良くないよ。もっと考えて行動しなよ!」
「偉そうに。オレに説教する気?」
言い合いは平行線。イルミは冷ややかな顔つきのまま、じっとりリネルを見下ろしてくる。
「ホント根本的に考えが甘いよねリネルは。危機感が薄い分尚更タチが悪い」
「私は自分の身は自分で守れるようには行動してる。それをイルミにとやかく言われる覚えはない」
「…………へぇ」
「っ!!」
イルミの片手は一瞬でビキビキ音を立て、謎の変型を遂げていた。リネルが逃げるよりも早く その手の爪先が喉元に触れてくる。
イルミの掌を覆うオーラがえらく重苦しくて不快だった。そのまま首を掴まれると 絞められるみたいな感覚があり酸素がうまく吸えくなってくる。
「全然だね。殺ろうと思えばすぐ殺せるよリネルなんか」
「イルミは私を、くだらない理由では殺さないでしょ…それをちゃんと、知ってるから…っ」
「まあね」