第2章 指摘
翌朝。
まだ暗い早朝に起きたものの予定よりは時間が遅かった。ちらりと隣を見れば、イルミはリネルに背を向けた状態で寝ているように見える。きっとタヌキ寝入り、そんな気がしたが時間もない。リネルもそのままベッドを抜け支度に向かった。
最低限の身支度を整え、転げるようにハンター試験会場へ戻る。ホテルからの距離にすればそんなに遠くもないのだが、集合時間はギリギリだった。
今期の試験官メンバーの中ではまだまだ下っ端にあたるリネルは、集合時間より早めに着くべく暗黙の了解がある。身を縮めて試験官達の集合場所である会議室へ向かった。
「リネル 遅いわさ」
「……失礼しました」
入り口付近に立ち尽くすリネルにジロリと睨みをきかせてくるのは大先輩のビスケだ。ハンターとしての彼女の功績は尊敬の二文字でしかないが、規則規律となると小言を言うシーンが目立つ。
まだ集合時間前だというのに、すでに他の試験官達は全員揃っているようだ。リネルを交えて さっそく本日の打合せが始まった。
早朝からの打合せが終わり日が登り始めた頃、試験官達はしばしの休憩と称した朝食時間に入る。
試験会場の最上階にあるレストランでは、バイキング形式の朝食を取ることが出来た。
並ぶのは目にも美しい料理ばかりだ。ただ、朝なのであまり食欲もない。野菜や果物を中心に白いプレートに盛り付け それを窓際の席に運んだ。
「アンタそれだけしか食べないの?今回も長いんだからしっかり食べないともたないわさ!」
後ろからお節介なツッコミが入った。先程は遅刻で睨まれたばかり、リネルは気まずそうに振り返りビスケへ苦笑いを見せる。ビスケはリネルの隣にちょこんと座り込んでくる。
「食べなさいよ もっとたんまり」
「ちゃんと常備食持ってるから大丈夫。朝ってお腹すかないし」
「朝ご飯こそ一番大事なんだわさ!美容と健康に」
「わかってるけど、昨日はあんまり寝てないし尚更ね……」
落ちるのは疲労の溜息だ。リネルはビスケのプレートへ軽蔑の視線を投げた。