第1章 プロローグ
刹那、ぴくりと腰が揺れてしまった。イルミがそれを見逃すはずもなく 長い指はあっという間にショーツのサイドに留まる紐を掬いにかかっている。
心底溜息が出る思いだった。どうせイルミは恋人同士を模倣した甘美な時間をくれそうもない。このままでは一方的な行為を強要されて終わりがいい所だ。それこそ実に癪である。
リネルはほんのり頭を上げる、ありありと呆れた表情を作り くるりとイルミを振り返る。互いのぶつかる視線は 既に欲情にまみれている。
「イルミのせいで起きちゃった」
「うん。おはよ」
乱れた胸元はすでにイルミの手の内だ。ショーツの紐だってするりと解かれてしまっている。前戯らしい前戯もなきままに イルミの指は秘部を撫でてくる。
「あれ 濡れてる?ホントはリネルもしたかったんだ?」
「……別に……っ」
寝着をはだけさせられた。イルミの片手は胸を堪能しつつ 尖る突起を指先でゆるりと捏ねてくる。身体を疼かせる刺激は強くなるばかり、ただ、今夜は可愛らしく身悶えしてやるほど素直になれそうもない。リネルは声を殺し、冷めた台詞を出す。
「雰囲気とかもう少し盛り上がるスキル身につけないと、奥様に嫌われるよ」
「やる時はやるよ」
本当に失礼甚だしい。
今はその時ではないと吐き捨て 身体だけの女にはキスのひとつすらくれないのだから、どこまでも馬鹿にされている気分だ。
イルミは秘部の中に容赦なく指を押し込んでくる。潤う肉壁がきゅんと震え 指先を窮屈に締め付けた。微かな喘ぎが漏れそうになってしまう。
「っ、…」
「リネルはホント敏感だね」
「…………」
「どうする?このまま挿れる?」
太ももにイルミのソレが押し付けられた。
こんな痴情も今夜で最後かもしれないのに、顔も見えない体位で進めようとは屈辱でたまらない。いやむしろ、その方が後腐れなく賢明なのだろうか。
久々に得る肉体への快楽に思考が乱れ、答えはわからないままだった。