第14章 婚約指輪
そんなリネルの様子をくみ、キキョウが声をかけてきた。
「この先の予定もあるし今日は量を調整してあるの。イルミにそう言われていてね」
「……イルミに?」
「ええ。だから安心して頂戴」
「あ、ありがとうございます」
そうしてくれるならば願ったりだが その進言がイルミから出ていた事には驚いた。優しい所もあるじゃないかと見直す反面、先日の醜態に流石にドン引いたのではないかと疑わずにはいられない。
リネルはちまちま小さな口での食事を進め、キキョウとの会話を楽しんだ。
「ねぇリネルちゃんは好きな宝石のブランドはあるかしら?」
食事の途中、急に投げられた質問にリネルはキキョウを見返した。そして少し首を傾げた。
「ええと、特にはありませんけど」
「ほほ リネルちゃんにね 婚約指輪をプレゼントしたいと思って。あ、もちろん私じゃなくてイルミからよ?」
「……婚約指輪?」
成り行きでの結婚上、まさか出てくるとは思わない単語に リネルは瞳をぱちくりさせる。そして本日の呼び出しの意図をなんとなく理解した。別に欲しかった訳ではないが、貰えるというなら嬉しくなくもない。
「言ってはいるんだけど ほら、あの子もあれでなかなか忙しいでしょう?かといっておざなりになってもいけないし。今日は午後に戻るって言うから2人で選んできたらどうかしらと思って!」
キキョウはまるで自分の事のように楽し気に弾んで見えた。リネルは遠慮を込めて「お気持ちだけで」との断りをいれてはみるものの、話はどんどん進みだし いつの間にかテーブルの上には宝石ブランドのカタログが幾つも並びはじめてしまった。
「是非!ね、楽しい素敵なデートになるわねぇ」
明るく良い人だが少々自分ペースで強引な所がある。キキョウをそう分析しながら とりあえず、何となく見覚えのあるブランドのカタログを手に取ってみる。