第13章 バー
「……結婚のこと、イルミに聞いたの?」
「ビンゴ♡」
「え?」
「これで確信。イルミの結婚相手はやっぱりリネルだった」
「…………カマかけたの?」
口元を満足気に歪め、ヒソカはテーブルを指先でトンと叩いていた。
決定打を与えてしまったのは自分、まんまとヒソカにはめられた訳だ。これでは面倒ごとを自ら招いたようなもの、リネルは諦めの溜息をつく。
ヒソカは一旦前を向く。
「でも報告もなくいきなり結婚なんて随分冷たいねぇ。ボクこれでもキミの事はだいぶ優遇してあげてたつもりだけど?」
「……なにそれ」
「お仕事を口実に仲良くしたり、1度だって手を出したこともない」
「あははっ そういう風に言うとそれなりっぽく聞こえるね」
ヒソカに本心なんてないのは知っている。意味深な台詞を真に受けることもなく、リネルはから笑いを混ぜ 肩をすくめて見せる。
ヒソカは細く息を吐く。
「リネルはまだ青くてこれからの飛躍と成長に期待していたのに。イルミがつまみ食いしてたなんて酷い話だよねぇ」
「つまみ食いって……てゆうか青いって何、そんなに初々しくなんかないよ」
ヒソカは横目でリネルを見る。表情は相変わらずにこやかだが、その瞳には若干の鋭さを孕む。
「ボクにハントして欲しいのカナ?」
「全然。……ヒソカがスリル求めて動いてるのは知ってるけど、私と闘ってもヒソカが満足出来るとは到底思えない」
「ヤッてみないと、わからないよ」
「わかる。私を餌にイルミも釣れたらラッキーとか、そんなところでしょ?」
「……リネルには敵わないなぁ」
「思ってないくせに」
ヒソカは独特の笑い方でその場を煽ってくる。
「…………」
リネルはグラスをぐいと一気に飲み干した。