第81章 コミュニケーション/日常
「シングルマザーって リネルには関係ないし必要なくない?知識として興味があるの?」
「関係なくないよ。というか他人ゴトとは思えないし」
「仮にリネルがウチを出て行く事になったとしても シングルマザーになることはあり得ないよ」
「なんで?」
「リオンはウチのコだし」
リネルは小さく息をつく。きっぱりそう言うイルミの言い分にも もはやそれ程驚かないが、言い返したい事はなくもない。
「わからないよ そんなの。リオンがどうしても私について行きたいって言うかもしれないし」
「言ったとしても許可なんか出ないよ」
「わからないって 何があるか。えっと、例えば、ククルーマウンテンの地下から次世代型キメラがわいてこの家の人間全員殺されてこの家滅びちゃうかもしれないし」
「あり得ないよ。万が一その状況になったとしても リネルとリオンだけが生き残る可能性はスゴく低いと思うけど」
「…真面目に返されてもな…」
気付けばまたCM、片手が例のクッキーに伸びる。それをポリポリ味わっていると ばたばた両手を遊ばせイルミの長髪にじゃれつくリオンが視界に入ってくる。
「ああー!」
「なに?髪が気になるの?」
「そのさらツヤ髪は気になるでしょ~リオンにむしられる前に急ぎまとめる事をオススメする。私やったげようか」
「多少むしられるくらいいいけどね」
「私が嫌なの!髪の毛落ちるもん」
「掃除させれば?」
「あ、ちょうどいいもの見ーっけ!」
急に明るい声をあげ リネルは上半身をくるんと返す、そしてイルミに手を伸ばした。
「リオンー髪の毛おしまいねー」
「んあ~!!」
リオンの手から勝手にそれを取り払えば リオンはしかめ面をする。ちょんと覗く2本の前歯が愛らしい。
横からイルミの髪をひとまとめにした。相変わらず、ノイズのない黒髪は柔らかいのにはっきりコシがあり女の身からも嫉妬を覚えるほどだ。
ゆるゆるの無造作な三つ編みを作る、それをクッキー袋を閉じていた輪ゴムでもって一つに括ってみた。