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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第81章 コミュニケーション/日常


ある日の白昼。

まさにワイドショーなるテレビ番組が盛り上がっている時間帯、リネルは自室でテレビと向き合い真剣な顔をしていた。

『例えば2年前と比較し 片親で子供を育てる女性の割合は3%も上昇しており……』

「うあぁ」

足元には ハイハイを駆使した徘徊にすっかり飽き切ったリオンが纏わり付いてくる。それでもリネルの視線は画面に固定されたまま。リオンには目もくれず ソファに幾つか転がる音の出るオモチャを手先で素っ気なく揺らし我が子の目の前に差し出す。そして 脚を組み替えた。

『国の政策として母子家庭世帯への支援金や援助制度の充実が求められる時代に……』

ごくりと唾を飲む。CMがスタートしたと同時にテーブル上に手を伸ばす。輪ゴムかけ状態の口の開いたクッキー袋から中身を取り出し、それを口の中へ放り込んだ。





仕事明けに帰宅した後、すべきことが全て済めば当然自室に向かうのだが 気配を読み取れば 一応は顔を出し「おかえり」の一言を言ってくるのがここ最近のリネルだ。
ただ、本日に限っては明らかにリオン共々自室内にいるというのに 少しも出てくる気配がない。
何もこれといった用事はないが これから即やるべき事がある訳でもない。よって本日は何気なく イルミの方からリネルの部屋のドアを開ける事になる。

妙に素早く首を回し1番に反応するのは息子のリオンだ。
リネルの足元でちょこんと座り オモチャを舐めながら遊んでいたが イルミの姿を視界に入れるなり こちらに注意を向けてくる、それをじっと見返した。

「………………」

しばらく無言で見つめあった後 リネルの部屋に足を踏み入れると、リオンは 板につくハイハイでもって 控えめにこちらへ向かってくる。


「ただいまリオン」

「あ」

イルミは真っ直ぐ見上げてくるリオンを両手で抱き上げ、音も立てぬまま リネルの元まで進んで行った。

「何見てるの?」

「テレビ」

即答されるが 聞いているのはそういう事ではない。イルミとしては画面右上に文字られる「急増!シングルマザー」なるキャッチフレーズの番組をリネルが真剣に見る理由が解せない。
相変わらずテレビに神経を集中しているリネルの隣に腰を下ろし リオンを膝の上に乗せる。そして、ひとり首を傾げた。

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