第80章 棺(ひつぎ)/日常
昼間カルトもリオンに対し似たような事を言っていた、やはり兄弟 着眼点が似ていると思い 皮肉にふっと笑ってみた。
「イルミ 兄弟ってどう?」
「どうって?」
「私にはいないから。やっぱりいて良かったなって思う?」
「まあね。家族って組織体で見れば多い方がいいとは思う」
「そっか」
皿に落とされ伏せ目がちだったイルミの視線が真っ直ぐこちらに向けられた。
「リオンに兄弟作りたいの?」
「いや いい」
「作る事自体は吝かではないけど」
「いいってば。カルトがリオンのお兄ちゃんみたいなもんだし」
リネルは残りのメイン料理をパクパク口に頬張り、粗く咀嚼をした後 水分と共にゴクリと一気に飲み込んだ。
「イルミ お願いがある」
「なに?」
「今度のお休みの時でいいから例の柩に一緒に行こ。リオンと3人で」
「せめてある程度歩けるようになってからじゃないと訓練にはまだ早いよ」
「違う。公園として」
「公園として?あそこで遊ばせるってこと?」
「そう」
時が来たらきっと。
リオンにとってもカルトやイルミ同様、そこは苦い思い出の残る訓練場になるのだろう。それでもその前に一般的な公園体験をしてみる事はいけないことではないと思う。
不思議そうに首を傾げるイルミが 質問をしてくる。
「行ってもいいけど何するの?」
「ブランコ乗ったり、滑り台したり、砂遊びしたり」
「ならカルトと行けば?」
「カルトはリオンのお兄ちゃん枠で 父親はイルミでしょ?リオンもたまにはイルミと遊びたいと思うし」
それぞれの立場を明確に。
揚げ足をとったつもりだったが イルミはあっさりと的確な指摘を投げてきた。
「正確にはカルトはリオンの叔父だよね」
「わかってるけど、あんな可愛い叔父さんなんて変だもん」
リネルは 昼間のカルトとリオンの本当の兄弟のようなやり取りを思い出した。