第80章 棺(ひつぎ)/日常
公園で遊ぶ感覚も、兄弟も知らないリネルには この柩はどこか特別な気がした。リオンを膝に乗せ、カルトと2人ブランコに座りながら しばし話をした。
「まさかさ、ぼく」
「ん?」
「この柩をこうやって普通に使う日がくるとは思わなかった」
「ブランコ乗ってお話してって言うと 確かに今は普通の公園として使ってるよね」
「ぼく昔、リネルが座ってるブランコのあたりでイルミ兄さんに首突かれて脳ミソ揺れ過ぎて呼吸止まるまで吐いたことある」
「…………。今は普通の公園て事でさ、そういう話は置いておこうよ」
カルトは細い顎を上げ 空を見上げる、リネルはその横顔を見つめた。大きな黒い瞳の上に乗る長い睫毛がより一層際立って見えていた。
「やっぱりここにはそういう記憶ばっかりだ」
「そっか」
リネルはそう言うカルトから、リオンに視線を移した。