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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第79章 似非イクメン/日常


一瞬のうちに場を崩すオーラを纏わせるイルミの反応とくれば、ますます面白いの一言である。子供に触れる機会でもあろうものならイタズラのひとつやふたつやみっつ、仕掛けてやりたい所だが 残念ながら目の前で能面ヅラのまま目を光らせるイルミがそんな事は早々許してくれそうにない。

イルミの不快な雰囲気に触れたせいなのか、リオンの泣き方は激しさを増す。


「ぎぁあああああぁぁん!」

「あの~ 大変申し訳ないのですが………」


大の男が2人も揃ってギャン泣く赤ん坊ににっちもさっちもいかない様は 静かな店内で多いに目立つ。どこかの客から苦情でも入ったのか、女性店員が気まずそうに声をかけてきた。


「他のお客様の、その、あの……」

「あ、そうだ忘れてた。ねえ今何時?」

「え?ええと…17時10分ですが…」

「そ。どうも」


イルミは 勇気を持って掛けられた店員の声を、自身の都合で勝手に曲げてしまう。腕時計に目をやったままの店員に口先だけの礼を述べていた。

片手でリオンを支え、横から取り出すのはマザーズバッグならぬファザーズバッグ。どこに何が入っているのかまるでわかっていない様子でバッグの中をひっくり返す。ようやく哺乳瓶を取り出すと それをそのまま店員に差し出した。


「お湯もらえる?」

「え?」

「ここに。80ml」

「あ、はい……」


お湯くらい言えばくれるのは飲食店のサービスの一環らしい、店員はオーダー通り一旦その場を去った。




「なるほど お腹空いてたのか」

「遅くても17時には飲ませてって言われてたの忘れてた」

イルミは 女性店員から受け取ったものに持ち込んだミルクやら水を足し、素早く哺乳瓶入りミルクを完成させる。それを子供に与えるイクメン風な行動は ヒソカの目にはなんともシュールに映り、一部始終をニマニマしながら見つめることになる。


「いい飲みっぷりだね」

「そんなに焦って飲まなくてもいいよ。誰も盗ったりしないから」


当たり前だが返答もしないまま リオンは両手を吸い口に添え ほぼ一気に中身を飲み干し、急に目元をトロンとさせる。

イルミは 小さな背中を数回トントン叩いた後、くたんとしたリオンの頭を一撫でし 膝の上に座らせていた。


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