• テキストサイズ

〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第79章 似非イクメン/日常


必然の如く言い切るイルミに「温度や常識的な意味合いで」と言うべきなのだろうか。まあ、ヒソカにすれば他人の家の子がどうなろうが知ったこっちゃないし 黙って様子を見守ってみる。

イルミときたら ものは試しと言わんばかりにコーヒーカップを我が子の口元へ近づけていた。


「…うっ あーん あああーん!」

「だから言ったのに。苦いって」


イルミに良く似たその子が 黒色の液体をべっと吐き出し大きな眼を歪めながらぐずる様は、ヒソカの目に 何故だか少しだけ小気味良くも見える。


「うあーん ああああーん!」

「ま、リオンも大きくなれば味がわかるようになるよ」

「そもそも味の問題だけなのかは疑問だな」


こちらの指摘は完全無視状態のイルミは 唾液と混ざったコーヒーで汚れたリオンの口元を 服の上に掛けられたスタイでささっと拭き、無表情のまま度々コーヒーを傾けていた。




「あああーん ぎゃああああーん!」

「赤ん坊の泣き声って耳障りだね」

「慣れればどうってことないよ」

「全然泣きやまないじゃないか」

「ね。リオンごめんてば、泣き止んでよ」


イルミはリオンの両脇に手を差し入れ 喚く我が子と顔をじっと見合わせる。一方のリオンに そんな気休めにもならぬ機嫌取りが効くわけもなく 背をピンと仰け反らせたままこれでもかと派手に泣きじゃくり続けていた。


「ああーん あああーん!ぎゃあああああぁぁん!」

「イルミ、キミさ」

「なに?」

「相当 嫌われてるんだね」

「父親なんだしそんなワケないだろ」


“血筋こそ究極の秩序である”と言いたげなイルミの理論は大概というかなんと言うか。弱々しく泣くだけの赤子であれど 事実上は血を分けた息子、やはり大事な存在だと言うならば尚更、ヒソカにとってはいい玩具になり得る。

大きな手のひらを静かに差し出し ヘラリと笑顔で声をかけてみる。


「ねぇ、ボクにも抱かせてよ」

「は?」

「モノは試しって言うだろう?泣き止むかもしれないし」

「言っておくけど勝手にリオンに触れたらタダじゃおかないよ」

「……♡」


/ 497ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp