第78章 依頼人/裏
息子に会ったたった短分でそんな所を観察している点が どこか嫌味めいている。
そして リネルの過去の想いやイルミの知る倫理観、クロロとて男だと理解すれば その辺りは推測が立たなくもない。
表情にも態度にも出してはいないのに、違和感程度に変わる空気をゼノがあざ笑った。
「カッカッカ 隅に置けん娘じゃな。お主のような輩他 若い割にはなかなか人脈が広い、さすがは我が家に来た嫁よのうイルミ」
「ウチにとっていい意味で、なの?それ」
「わからんわい。善にも悪にも働くかもしれんが 生かすかどうかはあの娘をどう使うか次第じゃろう」
そう言い笑うゼノを視界の隅に置き、イルミは酒腕を傾けた。
「さて次は何にするかの いつものにするか…お、そうじゃ 先日得意先から寄与された隣国王室の逸品でも開けてみるか。お主当然まだイケるな?」
「当たり前だ」
「イルミ お前もじゃぞ」
「わかってる。仰せの通りに」
どのみち自分に拒否権はない。建前でのみ成り立つこの場はまだまだ続きそうである。2人の会話を聞きながら イルミは残る酒を口内に溶かした。
fin