第78章 依頼人/裏
小一時間程経ち 新しく高級酒が注がれる頃、クロロが思い出したように言った。
「そうだイルミ 先程見たぞお前の息子」
「ああ そう」
クロロが美酒に口を付けた事を確認すると ゼノが椀を傾け、得意気に会話を拾った。
「期待はあったが男児で何より」
「性別はそれ程重要か?」
「我が家においては男児比率が極めて高い。その血を受け継いでおる証じゃ」
「アンタには似てないがな」
「外見の事を言っておるならお主もまだまだ青いのう」
「ほんの数分見ただけだ。まだ赤ん坊の判断基準が外見以外のどこにある」
「それもそうじゃなあ」
ゼノはケタケタ笑う。それに便乗し 口元を緩めるクロロは 注ぎ足される酒を一口飲んでから小声を響かせた。
「だが リネルにも似ている」
「………ほう」
クロロの発した言葉はゾルディック家内では初めて出る指摘点だった。あからさまに意外だと臭わせたげなゼノの感嘆の声を聞きながら クロロは意味深に話出した。
「髪色とその独特な目元のおかげで一見イルミ お前に似ているように見えるがな。耳の形や上唇あたりはリネルに似ている。」
「そうかのう?」
「リネルとは長い付き合いだしな 何より…近くで観察すればよくわかる」
「ほう…。その辺りはイルミ お前の方が詳しかろう、どうなんじゃ?」
「どうだろうね」