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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第78章 依頼人/裏


「イルミはさ」

「うん」

「リオンが可愛くないの?」

「可愛いよ」


即答の割には イルミはあっさりベッドから腰を起こす。
相変わらずじっと見つめてくるリオンをスッと抱き上げると まばたきのない我が子の顔を見返した。


「う あ~」

「なに?子供は早く寝なよ」


我が子をあやすというよりは睨めっこでもしているような光景にツッコミを入れるべきかと思う。

何というかを考えていると、じっと観察してくるイルミの視線を感じた。




「……?なに見てるの」

「……言われてみれば確かに似てるけど」

「え?」

「どちらかといえばリオンはオレ似だよね」

「……そんなことないと思う」


イルミを見上げながら苦々しくそう答えた。




◆◆




数刻前。

ゾルディック家内には接待の為に用意された客間が幾つかある。客の好みやランク、主たる接待者の気分で使い分けをしているのだが 本日イルミが呼ばれたのはジャポン式の座敷が整う部屋だった。

イルミ自身詳しくは知らないが 部屋に飾られる掛け画や花々を引き立てる壷達はかなり値の張るものであると 幼少期から聞かされてはいた。招かれた部屋に入れば 人当たりの良さそうな表情を見せるクロロの姿があった。


「久しいな イルミ」

「うん。クリスフォード以来?」

「ハンターランド以来だろ」

「あ、そうか」


興味も重要度も薄いので忘れていたが、思い起こせば自身が請負う依頼が絡む用件以外で クロロと顔を合わせるのは今日で3回目になる。
朗らかに感じる口調と比較し 接待を受けるには少しも気を抜いていないクロロの様子から、この男の世間体と立ち位置を再認識する。既に座を崩しているゼノがイルミに話し掛けた。


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