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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第78章 依頼人/裏


「さっきはごめんねリオン…」


リネルはぽつんとそう呟き 胸元に収まるリオンを申し訳ない気持ちで見つめていた。無垢な瞳のリオンを見ていると罪悪感でいっぱいになってくる。
リネルははあと大きな溜息をついた。


「何してるの?」

「……あっち行って」


人の部屋のシャワーを我が物顔で使った後、乱れた寝室に足を戻すイルミをジロリと一瞥した。

そんな視線をものともしないイルミはベッドサイドに腰掛けてくる、先ほどの酒の臭さに変わり シャンプーの香りが漂ってきた。
ツンとイルミに背を向け 胸元を整えた後、リオンをベッドにころんと寝かせた。お腹も膨れずっと抱かれていたおかげか リオンは機嫌良くリネルの顔を見返していた。


「あー 」

「そうだね…1人で寂しかったね」

「そうやって甘やかしてるから夜泣きするんじゃないの?」

「泣いたらご飯あげて抱っこしてあげるの普通だよ」

「要望我儘を全部聞くつもり?」

「そうじゃないけど。リオンはまだ赤ちゃんなんだから泣くのが仕事でしょ」


イルミを細目で睨む。先程の事を思い起こせば すぐに駆けつけられなかった事に更なる懺悔の念が押し寄せてきた。

事情が終わり 1番に泣きじゃくる我が子の元へ迎えたかと言うとそうでもなく、酒や汗に汚れた身体のままではいかがなものかと冷静にならざるを得なかった。大人が舐めた乳首を咥えさせるのもどうかと思う。結局はその場にいるイルミに「抱っこしてて」と命令口調で言い 急ぎシャワーを浴びることになったのだった。

赤ん坊独特の頭身バランスをしたリオンが頭をころりと返し、イルミの方に目を向ける。

見つめ合う親子の様子は傍目には微笑ましいが、淡々と情の薄い事ばかりを述べるイルミを見ていると リネルの口から出て来るのは溜息ばかりになってしまうのであった。


「ま、いいか。成長すればそうも言っていられなくなるだろうし」

「どういう意味?」

「訓練は訓練、躾は躾、そういう生活になる」


それは少しも間違った事ではないが やはり出るのは溜息。リネルはイルミに不服の顔を見せた。



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