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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第77章 希釈/日常


静かに部屋を出ようとするイルミの後姿を見ながら、何と無く呼ばれた目的を予想する。淡く下唇を噛みながら リネルは黙ってイルミの後を追った。

イルミは部屋を出るなり振り向きもせず テキパキと用件を話し出した。



「親父の命令だし厳しくいくよ。屋敷の外へ集合、まずは基礎体力の回復から。オレから2時間逃げ切れたら授業料だけにしてあげる。捕まったらペナルティ分も上乗せ請求、リネルからの攻撃は全て許可、殺す気でやるのはオーケーだけど実際の殺しは当然NGで、ってリネルにオレは殺れないか」

「…舐めないで。ペナルティはまぁ、ある方がヤル気出るけど授業料ってなに?シルバパパの命令なら役務じゃないでしょ」

「ルールはオレが決めていいって言われてる」

「じゃあルール追加して。2時間逃げ切れたら授業料免除プラス私にインセンティブ、そうじゃなきゃフェアじゃない」

「強気だね。まさか勝てると思ってる?」

「そっちこそ。いくら私が体力落ちてるからって攻撃なしでいけると思ってる?」


こういった内容であれば文字通り容赦なしであろうイルミが相手なのはある意味都合がいいかもしれない。リオンを交えた空気感からは一転し、ピリピリする程の緊張感が戻ってくる。このような雰囲気は慣れているし懐かしいとすら感じられる。


「あと逆にして。仕事柄追われるより追っかける方が得意なの」

「今の状態ではオレを追えないだろ。練習にもならないから却下」

「…そっちの方がヤル気出るのに」

「文句は親父に言ってよ。付き合ってやるだけ感謝して欲しいんだけど」


速足で廊下を進むイルミの後ろに続いた。


寝不足の慢性疲労となまった身体ではこのミッションは甘くない、それを身を持って悟るのは また数時間後のことであった。





fin

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