第77章 希釈/日常
そしてふと思う。こうして親子三人揃う時間はそう多いわけでもない、父性の芽生えに子供との触れ合いも大切だろうかと 上機嫌でイルミに話しかけてみた。
「ねぇリオンが “パパーゲップさせてー” って言ってるよ」
「ソレ リネルの代弁だろ」
「まあまあ 背中とんとんしてあげて。あ、そっとだよ?優しくね優しく」
「力加減についてリネルに言われたくないけどね」
イルミは渡されるリオンを軽く縦抱きにし、くたんとした丸い頭を肩に置いた。
「けふ」
「わ、ゲップも上手 リオンはすごいね~!」
「ただの生理現象だよ。いちいち褒め過ぎじゃないの?」
「いいの」
リネル自身もやや驚いている、妊娠中は再三文句を述べていたが今ではすっかりリオンに骨抜き状態である。可愛い息子を抱っこしているイルミの様子も 実に微笑ましい。
お腹がいっぱいになった後、すぐにとろんと眠りについてしまうリオンをベビーベッドに寝かせスヤスヤ眠る愛らしい寝顔を見つめた。そしてふと 顔を上げ隣に立つイルミに視線を投げてみる、横顔を拝んでみれば やはり似ているが似ていない。
イルミは静かにその場を離れると 空になった哺乳瓶を片手に取り、溶け残りでも確認しているのか 再びそれを観察し始める。
イルミの細やかな輪郭と手元のラインをじっと目で追ってみた。
「…」
「リネル」
名前を呼ばれ少し目を大きくした。イルミは 哺乳瓶を置き 何やら熱視線を見せるリネルに顔を向けた。
「おいで」
「え?」
「リオンはいつ起きるかわからないし時間は無駄に出来ないしね」
「……、」