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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第77章 希釈/日常


ずっと忙しなく日々を過ごしてきたリネルにとっては 子供が産まれてからの毎日の方がしっくりくる気もした。産休に入り仕事から開放され余暇を持て余す事もあったが 今ではそうも言っていられない。新生児に時間感覚はないし リオンとて例外ではなく昼夜問わずに泣き喚いていた。

周りの話を聞き推察する所によると どちらかといえばリオンは大人しい方だと思う。ただ、あくまでも赤ん坊、その場主義である事には変わらない。







親になり数週間が過ぎたある日の昼下がり。たまたま家に居合わせているイルミの横顔が 疑問符と共に目に留まる。


「……イルミ」

「なに?」

「さっきから何見てるの?」

「どの程度なのかなと思って」


普段、機会も興味もそれ程多い訳ではなかったせいか 見慣れているイルミの顔をこうやってただ眺めているのが今更ながらに不思議になった。


「ふにゃ あ~」

「うんうん そうだねーリオン」


リネルは腕の中でグズるリオンをとんとんあやしていた。
やたらと大人が新鮮に見えるのは、もしかしたらここ最近はリオンの丸い輪郭や赤ん坊独特のふわんとした空気にばかり触れているせいかもしれない。

我が子をじっと見つめてみる。髪色やつぶらな黒眼は言うまでもない、まだ顔がはっきりしている訳ではないが 第三者から見ても リオンはイルミに似ていると思う。

重ねるように、もう一度イルミに視線を戻してみる。ただ、こうして見れば 似ているようでも似ていないとどうしても感じてしまう。

顎先を持ち上げているせいか イルミの顔のラインがよりシャープに見えるし、横からだと鼻筋もくっきり綺麗に映る。真剣なのか何も考えていないのか 読めない色をした大きな瞳が真っ直ぐ捉える先には、容器に入った優しい色味の白い液体がある。イルミはそれを部屋の照明に透かすよう 目線よりも高い位置に固定させている。それはイルミの意のままに、ゆらゆら手元を回せば 中に入ったモノもつられてくるりと揺れていた。


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